2011年9月3日土曜日

XR RIKENON 50mm F2レンズ考

RICOH XR RIKENON 50mm F2。
このレンズは、RICOHの廉価版一眼レフカメラXR-500と同時に、1978年に発売されたレンズです。(・・・と思います。)

XRシリーズ初代のXR-1, XR-2が発売された1977年9月、ここからがRICOHでPENTAX Kマウント採用の始まりです。(それまではM42スクリューマウントだったようです)
でも、この初代XRシリーズでは、50mm F1.4かF1.7のみだったようで、まだF2はありません。

XR-1/2はいいカメラだったようですが、先行するメーカー(CANONやNIKONのことと思われます)主導の市場に食い込むことが難しかったみたいです。そこで、新しいユーザー層を開拓する目的で投入されたのがXR-500ということです(セント・ルイス出演のCMが印象的でした。「リコーのサンキュッパ!」懐かしいです。詳細がリコーのホームページにあります)。そのコンセプトにあわせて、廉価な標準レンズとしてXR RIKENON 50mm F2が開発されたというわけでしょう。

私が父親にねだって買ってもらったXR-500についていたのは、初代50mm F2ではなく二代目の50mm F2Lでした。
リコーのホームページによれば、1980年2月にXR-2の機能を一部省略してコストダウンを図ったXR-1000Sを発売(高級なXR-2と廉価なXR-500の中間的な位置づけ?)し、そのとき組み合わされたのも50mm F2だったとのこと。それでも人気はXR-2とXR-500に集中し、XR-1000Sはあまり売れなかったそうです。もしかしたら、このXR-1000S発売のときに50mm F2のデザインや光学系を変えずにパーツのプラスチック化を進めたものがF2Lなのかな?

リコーのホームページには、XR RIKENON 50mm F2軽量化の話題(こちら)が掲載されていますが、それによれば1980年にプラスチック化したとのこと。やはりXR-1000Sとあわせて開発?
軽量化の一環として、徹底したパーツ点数減らしとプラスチック化が図られたようです。

「部品点数を減らし軽くするにはプラスチック部品の採用が最適です。しかしプラスチックは成形時の伸縮が大きく、フォーカスの重要部品であるヘリコイドをプラスチックにするには多くのノウハウが必要でした。リコーはこのねじのプラスチック化をドイツのマイスター型作りの技術を習得し、日本式の「技術の普遍化」を応用して、工場で量産に結びつけました。」(抜粋)

この軽量化により、金属製では190グラムだったものが、153グラムになったと書かれています。
しかし、この記事に掲載されているレンズの写真は・・・あれ?鏡筒が短い!




1981年2月にカメラの主要部分を電子制御化したXR-6を発売したときに、「レンズ光学系はそれまでと共通、鏡筒を短く軽量化」した50mm F2レンズが組み合わされたそうです。とすると、1980年時点ではまだ短くなっていなかった(つまり私が持っているF2L?)ものが、1981年になって「中身は変わらず外側のデザインが変わった」ということになりますね。このリコーホームページに掲載された写真は、1980年開発のものではなくて翌年1981年開発のものと間違えたのではないかと思います。

E-420に装着!50mm F2L


さらに、1982年2月に発売されたXR-7で組み合わされたレンズは、「50mm F2 新鏡筒」または「50mm F1.7 軽量鏡筒」となっています。
「新鏡筒」「軽量鏡筒」と使い分けている、ということは・・・

50mm F1.7は光学系を変えずに軽量化を図ったもの
50mm F2は中も外も一新

と受け取れます。
整理すると、
1978年9月、XR-500発売とともに初代F2誕生
1980年2月、XR-1000S発売に合わせて「光学系、外観を保持しつつプラスチック化により軽量化を図った」F2(たぶんL)誕生、XR-500にも組み合わされた(私が入手したのはこの時期のXR-500?)
1981年2月、XR-6発売に合わせて「光学系は保持しつつ鏡筒を短くした」F2(S?)誕生
1982年2月、XR-7発売に合わせて「光学系も変更した」F2(こちらがS?)誕生
となります。

後の1984年にXR-Pを発売したとき、プログラム制御に対応した「RIKENON Pマウント」(PENTAX KマウントベースにRICOH独自のプログラム制御用接点を設けたマウント?)の50mm F2が出たのですが、これはたぶん1982年に変更された光学系をそのまま受け継いでいるものと思われます。

従って、「和製ズミクロン」と呼ばれるXR RIKENON 50mm F2レンズは、

狭義では初代金属鏡筒の50mm F2、
広義では初代と同じ光学系を受け継ぐ50mm F2L

といってよいのではないでしょうか。
しかし不思議なのは、レンズ光学系が同じである初代と二代目、初代は最短撮影距離45cmであるのに対して二代目F2Lは60cmとなっています。つまり、二代目は初代ほど近づいて撮れない設計になっているという点です。
もしかすると、ヘリコイド部分までプラスチック化したことにより、各レンズ相互の位置関係に機械的精度上金属ヘリコイドより若干甘い画質になってしまった(?)ために、特に影響が出やすいと考えられる近接撮影時の画質低下を考慮して(遠慮して?)60cmまでに制限したのかもしれません。

ということは、中間リングを入れて極端なマクロ撮影に使用する場合には、初代と二代目で写りに違いが出るかもしれません。
いや、通常は無視されるようなごく僅かな性能低下も許さないRICOHレンズ設計者の職人気質が、最短撮影距離の設定を45cmから60cmに変えさせたのかもしれません。
フィルム時代には全く問題なかったほんの少しの画質変化、もしかしたらE-420のデジタルセンサーでも識別できないほどの差かもしれません。E-5やE-P3の、デジタルレンズ性能をようやく引き出せるようになった最新センサーと画像処理エンジンで比較して初めて認識されるような僅かな違いなのかも・・・

どちらにしても、開発当時のカメラ事情やフィルム事情を考えると、とんでもないこだわりの世界ですね(勝手に想像しているだけですが)。
少なくとも、フラッグシップカメラに装備する50mm F1.4やF1.7でなく、いわば一眼レフ初心者の勉強用お買い得カメラにつける、性能が高くなくても誰にも責められることのない50mm F2というレンズに対して、不要と考えられるだけでも4回も(!)改良したというこの事実。

手元には今年春にオークションで手に入れた初代50mm F2があるのですが、絞りリングが少々堅いので修理しようと考えています。でも撮影そのものには問題ないレベルなので、ぜひF2Lと比較してみたいです。


理化学興業株式会社創業以来、綿々と続く「リコースピリッツ」みたいなものを感じずにはいられません。・・・ちょっと大げさかな?

どうも私は、ナンバー・ワン企業よりもこういう光るものをもつ企業が好きなんですね。

トヨタや日産ではなくダイハツとか(車の免許を取って最初に乗ったのが世界最小、1リッターディーゼルエンジンを積んだシャレードディーゼルの中古車だったりして)、ニコンやキヤノンではなくリコーやオリンパスとか・・・

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